ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2014.11.27 21:01

天ぷら蕎麦からのトリクルダウン

小林先生が「4300円?たっけ――――っ!」
と思いながらも、
超高級天ぷら蕎麦
頻繁に注文されることによって、
その和食レストランが潤って、
先々を考えて内部留保するような考えを捨て、
従業員全員の給料を大盤振る舞いにアップし、
ウエイター2年目(アルバイト)の26歳男性の時給が
1100円から1200円にアップし、
1日8時間勤務で800円アップ
月間20日勤務で16,000円アップして、
月給が19万2000円になったので、
毎月2万円づつ貯金してきたけど、
将来を考えてこれからは3万円貯金する・・・

・・・のをやめて、
新宿2丁目へ繰り出し、
いままで高くて入れなかったチャージ1500円のバー絵文字:星で、
はじめてスコッチウイスキー絵文字:キラキラをたしなみ、
カウンターにいた女の子に1000円のカクテルをおごると、
笑顔で会話してくれることがわかり、

「1000円? たっけ――――っ!


とは思うものの、会話したくてどんどんおごり、
しかもその子がやたら大酒飲みのようで、
結局は7、8杯おごっちゃって、
自分も気分が良くなって、
ふだん居酒屋で飲むときは、
無駄金使わないように、
絶対に23時半には飲み終えて、
確実に電車で帰れるようにしているけれど、
今日は給料が上がったから気分が良くて、
明日のことなど考えずに、
夜更けまでワイワイ楽しくしこたま飲んで、
12,000円の会計となり、

「12,000円? た、たっけ――――っ!」

と思いながらも支払い、
支払ったと思ったら、さっきまで飲んでいた女の子は
消えていなくなっており、
仕方がないので、
ほとんど乗ったことないけど、
タクシーを止めてどきどきしながら乗り込んで、
メーターの上がり具合に心臓バクバクさせながら
自宅に着くと、深夜2割増しの4,000円となっており、

「4,000円? た、た、た、たっけ――――っ!」

と思いながらも支払ってしまったので、
せっかくアップした16,000円の給与は
ひと晩で消えてなくなった。

・・・楽しいけどこんなことしてたら一生貧乏だな。
もっと節約・節制して貯金していかないとな。
こういうのは、1年に1回の自分へのご褒美でいいや。

・・・いやいやいや。

アベノミックシュでどんどん景気が良くなって、
富裕層向けのうちのレストランは値上げするんだ。
かけ蕎麦は10,000円に、天ぷら蕎麦は16,000円になり、
天ぷら御膳は20,000円だ!
いまは滅多にチップをくれる日本人はいないが、
景気が上向くにつれ、チップをくれる人が続出するはずだ。
蕎麦持ってくだけで5000円!
天ぷらのせる交渉するだけで3000円!
おまけに時給はガンガンアップ!

ハッハー、どうだ、すっかり気が大きくなった!!
よーうし!!

これまでほそぼそと貯金してきた、
現金20万円を
全額引き下ろして、
ソニーの3D&4K対応液晶テレビを買っちゃうぜーっ!
別にいまある普通の液晶テレビで十分だと感じるが、

「20万円? た、た、た、たっけ――――っ!」

と思いながらも、どーんと買っちゃうぜーっ!
で、いまある普通の液晶テレビは・・・まだ使えるけど、
うちにはテレビのジャックが1個しかないから、
豪快に粗大ゴミとして捨ててやるぜーっ!

・・・というトリクルダウンが起きる確率は、
一体どのくらいなんだろう。
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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